著者あとがき
こんにちは。作者の山口絵理子です。
この絵本は実際に私が経験したことを元に描いています。
舞台となったインドネシアのジョグジャカルタは、日本でいうと京都のような古都で、現在も王宮文化が色濃く残る小さな街です。
街のあちらこちらにフルーツがたくさんあり、初めて訪れた時は「パイナップルを食べていれば生きていける」と現地の人に言われました。それくらい平和でのんびりとした国でした。
小さな国ですが、王宮に捧げるために培われた伝統的な技術と、それを今では、お土産屋さんなどで細々と販売する職人さんたちに現場でたくさん出会うことができました。
ですが驚いたのは、何年も前から変わらないデザインを作り続けていることで、結果として技術の発展はなく、職人さんたちは年々減少傾向にあるということです。「子供たちには自分の仕事をつがせたくない」という年配の職人さんの姿に胸が痛くなりました。
そこで私は、この絵本のように「新しいものに挑戦すること」を提案したのです。
ジュエリーという分野で、新しい素材の作り方、新しい形、新しいサイズ。当初、職人さんは眉をしかめてなかなか前に進もうとしませんでしたが、やっぱり「やればできること」を教えてくれました。
「はじめてこんなものを作ったが、本当にきれいだ・・・。」と職人さんは驚き、それがお客様へ届き、現在は「若い人たちに自分の技術を教えたい」と自ら技術の伝承をしています。
前に進み、変化を起こす日々の努力がなければ、繊細で素晴らしい技術も、明るい未来を描くことは難しくなってしまいます。挑戦した先に見える景色は人生観を変えます。
ウチのようにそばで一緒になってその過程を楽しむことで、挑戦の結果に関わらず「成長」と「変化」を感じてほしい、私はそんなことを伝えたくてこの本を描きました。