著者あとがき
こんにちは。作者の山口絵理子です。
この絵本は実際に私が経験したことを元に描いています。
ネパールでモノづくりの仕事をはじめたのは、2009年。
ネパールは、エベレストという偉大なる資産に恵まれた観光産業がありながらも、政治、経済ともに停滞していて、ひどい時は一日の停電が18時間もありました。国内でエネルギー資源を豊富にもっていないことから、インドに電力を頼りながらもなかなか関係性がうまくいかず、今でも民間企業の数も非常に少なく、大使館の前にはいつも長蛇の列で、海外へ行きたいと多くの若者が国外に希望を見いだしています。
ただ、全ての国には可能性がある。
ネパールには、ヒマラヤを中心とする大自然が存在します。山から流れる水、花や葉、素晴らしい自然の生態系と、電気がない中で生活していく大きな知恵が人々にはありました。
「自然のもので、布を染める」というモノづくりの方法は、彼らが彼ら自身の厳しい環境の中でも「あるものを最大限に生かして使おう」という思想から生まれています。
私はこうした発想は、今日本で失われつつある大事なことのように思いました。自分達がもっているものは何かを自覚し、その価値が100%発揮できるように努めることは、人生においてもとても大切なエッセンスだと思い、この本を描きました。
他国や他者と比較するのではなく、それぞれの子供たちが持っているものに、ぜひ目を向けてほしい、そんな願いを込めて。